歩行とは、ヒトの場合は二本足で歩くことをいいますが、より具体的に言えば片方の足を宙に浮かせて前方に振り出し、その足が接地したら今度はもう一方の足を前方に振り出すという動作を繰り返すことを意味します。
では、この動作がどのような仕組みに基づいて行われるかというと、これは他のあらゆる動作と同じです。
すなわち、神経が筋肉に適切な動きをするよう指示を出し、筋肉がそれに応えるというものです。
ただし通常の歩行では脳から直接指示が下されるのではなく、中枢パターン生成器と呼ばれるニューロン群が集積した神経回路が制御を担当します。
この回路が振動することによって一定リズムの電気信号が出力され、筋肉を収縮させます。ヒトの場合、この中枢パターン生成器は脊髄にあります。
もちろん、歩行の仕組みに脳がまったく関与していないというわけではありません。
動作に何らかの変更を加える必要が生じた場合、たとえば前方に障害物を発見し、またぐか迂回するかの判断を迫られるなどの場合は、視覚情報を脳が処理したうえで必要な動作を行うよう筋肉に指示します。
つまり歩行に必要な筋肉の動きを制御する仕組みには、低次と高次の2段階があることになります。